31 Aug 2011

「失敗の本質」

上司から薦められ『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』を読んでみました。
 
 ●内容
第二次世界大戦における諸作戦の失敗要因を、日本軍の組織の欠陥という観点から捉えたもの。
具体的には、ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ沖海戦、沖縄戦における日本軍の「戦い方」「敗け方」を研究対象とし、日本軍が戦略及び組織をその時々の環境に適応させることに失敗したと結論づけている。そして、日米の組織原理の比較検討を通じ、組織としての日本軍の負の遺産を批判的に継承もしくは拒絶することを現代の読者に促している。


●感想
これまでの戦史研究では、敗戦要因が日本軍のハード面での戦力的劣勢や予測不可能な状況における誤判断などにフォーカスされているように感じていた。しかし、本書ではそれらを許容したそもそも日本軍の組織原理や特性をあぶり出し、合理的組織とは何か?という点にまで議論を発展させている点が面白い。


また、日本軍と米軍の戦略・組織特性比較(本書p.338)では、例えば日本軍の戦略が短期的・帰納的特性を持つのに対し、米軍のそれは長期的・演繹的とされ、日本軍の組織が集団主義・プロセスに基づいた評価を重視するのに対し、米軍では構造主義・結果に基づいた評価がされる etcなどといった対比がなされているが、これらの要素は現代の日米企業の組織経営比較にも通じており、非常に興味深い。


著者も指摘しているように、日本企業(や日本的組織文化)は継続的な変化への対応を得意とするが、突発的な環境変化への適応能力がない。そのため、これまでも家電や自動車等一つの製品の洗練化にて強みを発揮してきた分、新たなアイデアのブレイク・スルーを生み出してはこれなかった。


新興国の台頭、少子高齢化、エコ、クラウドコンピューティング等々、ここ数年で生まれた新たな環境変化を表すキーワードは枚挙に暇がない。
それら課題に柔軟に対応するためいかに組織を変革できるかが、日本の命運を分けると言っても過言ではない。